精霊鉱脈 -アイム-15

writton by 萩梓

 背の順で三人と一本が、尚も精霊石の洞窟を進んで行ったところで、
「……混ざった、混ざった混ざった混ざった……あ!」
 と叫んで、一番後ろのアイムが足を止めた。
「混ざったって、ずーっと前に精霊さんに言われたことあるわ!」
「……何だよやかましい」
 フォルクスの嘆きも聞いちゃいない。
「いやな、このアイムさん、昔新入りの精霊さんと、軽く喧嘩になってなー……」

 話はこうである。
『貴方、有翼人じゃ無いでしょ』
 昔初対面のアイムに、大胆にもこう話しかけた精霊がいたのだ。
『よくも見事に「混ざった」ものね。手を出すなら相手を選んで欲しいわ……あのエルフもどき』
『有翼人だってば! だって、お父さんもお母さんも』
『はあ? 貴方、飛べないでしょ。それに親のどっちにも似てないし』
 勿論、アイムが殺し屋として名を馳せるより、ずっと前の話。
「……で、このアイムさんは、そいつと一日口をきかなかった」
「一日なんだ」
「言われ慣れてたからなー」
 当時のアイムは、周りの子供達にそう言われては、しょっちゅう殴り合いの喧嘩をしていたのだ。
「あいつ元気かな」
 ぽつりと呟く。
「こんなに精霊さんの匂いがぷんぷんしてたら、誰がいたって見つかりやしねーし」
「お前、この状況分かって言ってる?」
 と、フォルクス。

 その時一人、無言で鉱脈をゆっくり進んでいるドワーフを見て、
「ん?!」
 アイムが不意にフォルクスを追い越したと思うと、ドワーフの頭の布だけを掴んで、左にぐわし、と回した。
「お前、何やって……」
 ドワーフが足を止め、振り返らずに右足を三回タップする。
「――――ほん、ほん、本日のステンダー地方の天気は晴れ、晴れ、ハレハレハレ気温はじゅ、イェイ、イェイイェイイェイ」
 重低音だがやたらノリが良いのはともかくとして、先刻のお方様がどうとか言っていたのとは、まるで別人な声のドワーフ。
「あっはははははは!!」
 アイムが爆笑する。
「何かこいつ、別のとこから操られて喋ってると思ったら、やっぱしなー!」
「いや全然分かんないし」
 フォルクスはともかく、ラヴェルまでアイムの行動を理解してない様子なのは珍しい。
 そーれ、と言ってアイムは更に、ドワーフの布を回転させる。
「――――私から魔法騎士団に、……依頼する……」
 また声が変わった。
 おかしな台詞に変わりはないが、ふとフォルクスは気付く。
「……これ、ザインさまじゃね?」
 聞き覚えのある声がその時、洞窟にクリアに響き渡った。

「フォルクス・バームを連れ戻せ」

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