サークル。
目の前のものが、そんな名前だろうとは思っていたが、他人の口から聞くと妙な感じがするフォルクスである。
「このアイムさんは三度目だな、こいつに出くわすのは」
「俺は……」
何となく、言葉を濁す。
「二回以上見たことがあるってことは、君達立派な関係者だね!」
二人の反応が面倒臭いのか、喜ばしいのか、良く分からないトーア。
「てゆーか!」
アイムが、ラヴェルを持った拳を握った。
「何なんだよお前〝ら〟は! 悪魔の紫なんざ、このアイムさんは現役の頃も一回もすれ違わなかったぞ! ったくルージュやらブラウやら、ついでにお前、何でこうホイホイと――なあフォルクス?」
「いきなり振るなよ……そう言えば俺も、現物見たのはアイムが初めてだったかも」
魔法の知識にはある眼の色ではあるが。
「……君、ベルナート閣下のとこにいた、シノって奴に似てるよね」
そこで唐突に、トーアが話題を変えた。
「はあ? ベルナートおじちゃんだって?」
未だに〝様〟を付けられないアイムが「それって…」と言うと、全員が後に続く。
「つるつる禿頭だったのか?」
「そいつも悪魔の紫だったっつーの?」
「こーんなに目付きが悪かったの?」
アイム、小さく咳払いをする。
「フォルクスなあ……このアイムさんは厳密には禿じゃねーぞ。毎朝剃ってるんだからな。それとラヴェル……覚えとけよ」
持ち主の低音ボイスに、ちょっとだけラヴェルが縮んだ気がした。
「……とにかくとにかく!」
話を戻そうと、アイムは地団駄を踏んだ。
「このアイムさんはな、フォルクスが拾ってくれるまで、食べ物もろくに売って貰えなかったんだからな! 眼と翼の色が不吉って言われてるせいで!」
「あのー、それ、お前のせいじゃね?」
フォルクスが突っ込んでみる。
「お前がその、漆黒の悪魔なんてベタな名前で悪名轟かせたせいで、一般市民の悪魔の紫眼のイメージがますます悪くなったんじゃねーの? 知らんけど」
アイムの褐色の顔が、分かりやすく暗くなる。
「……ってことはアーデルリアスでこのアイムさんが行き倒れたのって、元を辿ればこのアイムさんのせいっつーことなのか!?」
ひたすら喚く相棒に、ラヴェルはそっと溜め息をついた。
「はいはいはい、混ざりっ子達に槍さん、漫才はもう良いから、ついでにこの状況もどうにかしてくれないかな?」
トーアが言うと同時に。
ガガガガガガガ!
と音を立てて、精霊鉱脈の神殿が縦揺れを始めた。
上から石が落ちて来ないと思ったら、アイムの翼がフォルクスの屋根になっている。
ひょっとして、これはさっきのミッションとやらの続きなのだろうか。
「……にしたって、何を――ルミスシャイン!」
フォルクスが叫ぶと同時に、小さい光の馬が中空に現れ、アイムの頭をげいん、と。
「いってー、何でまた蹴るんだよ!」
蹴ったと思ったら、みるみるうちにルミスシャインは――巨大化した。ちょうど、普通の馬くらいのサイズに。
「ひょっとして乗れ、ってことか?」
あまり裸馬に乗ったことの無いフォルクスだが、神殿は今にも崩れそうだし、どうにかよじ登ってみる。アイムもそれに続く。
二人を乗せて走り出すルミスシャイン。その背から、アイムは必死に腕を下ろす。
「ほら、お前も乗れっ!」
伸ばした指先には、魂寄せのドワーフ。けれども先にアイムの手を握ったのは
トーア、だった。
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